1、パスティーシュ(文体模写)の元祖、清水義範を知っていますか?
どうも、カタダです。
ここ最近なんとなく、はてなブログ界隈で「文体模写」ブームが起きつつある予感がしています。
バズッたところでは、司馬遼太郎文体。
あと、イケダハヤト文体。
そして、藤沢数希文体。
なんてしれっと紹介しましたが、スミマセン後ろ二つは自分の記事です(^^;
ところで、これら文体模写(パスティーシュという)の元祖的な存在の作家ってご存知ですか?
そう、我らが星井七億氏――
――からさかのぼること27年ほど。
清水義範氏です。
1947年愛知県生まれ。愛知教育大学卒。1981年、『昭和御前試合』で文壇デビュー。1988年、『国語入試問題必勝法』により、吉川英治文学新人賞を受賞。奇抜な発想と、ユーモアあふれる斬新な切り口に定評がある。日本文学、世界文学に関する造詣も深く、幅広いジャンルで執筆活動を展開している。
(※著者プロフィールより)
2、「猿蟹の賦」で第一人者としての地位を築く。
彼が日本初かどうかは不明ですが、自身が「前例がなかった」と語っている(「小説家になる方法」 より)ので、とりあえず元祖として紹介します。
そんな彼が初めてパスティーシュ小説を世に発表したのが、「蕎麦ときしめん」収録の、「猿蟹の賦」という短編小説。
これは、司馬遼太郎の文体で猿蟹合戦を語るという、(今ではお馴染みだけど当時は)かなりユニークな作品です。
浜の蟹兄弟が仇討ちをしたがっている。
と、いうことは近在で知らぬ者がない。
三代昔の先祖の素行まで知れわたっているような田舎村である。村の中で秘密など持ちようもなかった。
ただ、
できるかどうか。
が、問題であった。
(※中略)
ここで、奇妙なものが登場する。
うしのくそ、
である。
世界中の例をさがしてみても、うしのくそ、などという馬鹿なものが登場する戦いはあるまい。
みたいな感じで、「余談」と「脱線」を繰り返しながら進む、2015年の現在に読んでも素直に笑える小説。
ちなみに同じく「蕎麦ときしめん」には、「商道をゆく」という司馬文体パロディも収録されており、こちらも必読です。
(というか、分かりやすいパスティーシュではないけど、表題作の「蕎麦ときしめん」もかなり笑える。)
他にも清水義範は、小林秀雄文体模写などを経て、ついには英語教科書に出てくる文体をパロディ化するという、「永遠のジャック&ベティ」という傑作も生みだします。
英語の教科書内で会話をしていた二人が、大人になってある日バッタリ再会したという設定で、繰り広げられる会話。
女性のほうが質問した。
「あなたはジャックですか」
「はい。私はジャックです」
「あなたはジャック・ジョーンズですか」
「はい。私はジャック・ジョーンズです」
こうして、三十数年ぶりに再会した二人は路上で奇妙な会話を始めた。
「オー、何という懐かしい出会いでしょう」
「私はいくらかの昔の思い出を思い出します」
「あなたは一人ですか?」
「はい。私は一人です」
「一杯のコーヒーか、または一杯のお茶を飲みましょう」
「はい。そうしましょう」
みたいな、懐かしくも面白い会話が続きます。かなりおすすめです。
3、まとめ
なんとなく知らない人が多そうな空気を感じたので、オススメ作者として紹介してみました。
※当たり前ですが、上記記事をパクリだとか言いたいわけではないので。masaki0709氏の記事は「ドラクエ」と掛け合わせたのが面白いわけだし、そもそもこういった類のものは真似て遊んでよいものだと思うし。
僕は単純にこういう、「文章で遊ぶ」みたいなことが好きなので、もっと一大ブームが起きて、いろんな作品を観られたら楽しいなーと期待しております!
(自分もなんか思いついたら書きたいところですが。。)
ではでは!
※追記
ナナオク氏からコメントいただいました。
紹介する書籍がかぶっていた笑。
インタビューでも言及していますが、僕は清水義範から強い影響を受けています http://nikkan-spa.jp/884514
- 2015/10/22 19:11
※「本物」の作品たち↓
街道をゆく 1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか (朝日文庫)
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: 文庫
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